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スリランカ山岳部の建設現場から見た、リアルなスリランカ！
Vol.2 お金持ちは楽しくなさそう |
貧しい家に招待されたら、たっぷりのカレーとバナナが出てきた。中流の家庭に行ったら、たっぷりのカレーとアイスクリームが出てきた。高級な家庭に行ったら、たっぷりのカレーとMEIJIのミルクチョコレートが出てきた。
スパイスで興奮状態になった口の中。バナナやアイスクリームで、それを甘くやさしく撫でるのは気分がいい。夜空を見ながらハンモックに身をゆだね熱帯の一日は終わってゆく（妄想・・・）。完璧だ。
一方、MEIJIチョコレートとの再会は多少気まずかった。日本では、かりんとうとかドロップあめの隣に陳列されるくらい、現役引退の危機にさらされているイメージがあるではないか。異郷の空の下で出会っても、目が合わないようにしていたい。しかしこの瞬間こそクライマックス。アイスの時なら別に言わないでも良かった事を自分は口にしてみることになる。「すこぶる富んでますよねえ」。いや、そう言ってあげるまで、豪邸での一晩は終わることはない。
貧が宿命なら、富は義務である。貧する側は無意識に被支配を望んでいる。富む側も、だから支配をやめられない。その秩序を崩しては両者が、国が不幸になる。とりあえず金持ち達はいつも手をつないでいる。人前での上品な仲良しごっこ。しかしそれを本当に毎日やりつづけるのは、DNA的に負担がかかるんだよね。
ホテルで高級中華料理の円卓を囲んでいる上流家族なんかは、いつも不自然に口数が少ないような。箸を口に運ぶ数も少ないような。おまけに罰ゲームのように、親子で英語オンリーでかろうじて通じ合っているような。
もともと、この国の人は、あまりお金を使わなくてもよい土の上で生きている。カレーの味は王様級だが、生物多様性の土の恵みから出来上がる作り置きなしのファーストフードだから、冷蔵庫は要るまい。精神を常に高いレベルに安定させておくために、3食の内容に変化をつけることは禁物だから、家計の目安はたてやすい。学校も病院も公立ならタダだし、バスや鉄道の運賃もまあ安い。
ボーっとしていては、富める人間はその義務を果たせないのがよくわかるだろう。有り余るお金がかわいそう。風邪をひいてリッチな私立病院へ行く。近所のスーパーマーケットに重装備のジープで乗りつける。子供を外人だらけの学校へ行かせ、ゲーム機とエレキギターを持たせる。脂の乗った腹を派手目に巻き隠し、一流ホテルの豪華なパーティーに出る。一見、愛する国土をインド洋に置き去りにして、宇宙へ身売りをしているようだが、実は国の秩序を守るために彼らは義務を遂行している。そしてそれはすこぶる楽しくなさそう・・・。
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●profile
明治浪（めいじろう）
職業：建設現場世話役
2007年4月よりスリランカの水力発電工事現場に在籍。外国企業と地元民の間の融和・各種調整を請け負う。
